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脊椎圧迫骨折とは
背骨のことを専門用語で【脊椎(せきつい)】と呼びます。脊椎圧迫骨折とは軽微な外傷により脊椎が押しつぶされ、変形してしまう骨折で主に胸椎、腰椎に起きます。骨粗鬆症が進み脊椎が弱くなると、少しの衝撃でつぶれてしまいます。転倒、尻もち、くしゃみ、重い荷物を持つなどで起こります。
骨セメント注入術とは
脊椎圧迫骨折は骨粗鬆症を有する高齢者に多く、人口の高齢化に伴い、大きな社会問題になっています。これまでの保存的治療では長期にわたり、安静を強いられるため、寝たきり、長期入院は避けられず、その結果合併症の併発も少なくありませんでした。経皮的椎体形成術【骨セメント注入術】は皮膚に局所麻酔をし、骨折椎体に直接穿刺針を刺し、そこから骨セメントを注入することにより、椎体を強化し疼痛を緩和する低侵襲治療です。
1990年代後半より米国を中心に、骨粗鬆症による圧迫骨折の治療が数多く施行され、その有用性が認められ1997年に日本に導入されました。当院でも2005年からこの骨セメントを取り入れ開始しております。
どのような治療手技なの?
STEP2
刺入位置、角度等にズレがある場合は補正を行い、再度CT撮影を行う。シミュレーションと一致するまでこの作業を繰り返す。シミュレーションと一致したら、ニードルがしっかり椎弓根に刺入されていること、刺入角度を確認する。
合併症(副作用)について
すべての患者さんに合併症(副作用)が起こるというわけではありません。ですが、起こりうる可能性のある副作用について説明いたします。
- 骨セメントが椎体以外に漏れた場合、セメントが血管に入り、肺へ飛んでしまう肺塞栓症や脊髄が通る場所へ漏れると下肢への麻痺や痺れ、痛みなどの神経症状があらわれることもあります。
- もともと骨粗鬆症で骨がもろいため、セメント注入により強くなった椎体の周りに負荷がかかり、隣接する上下の椎体に新しい圧迫骨折を起こす可能性もあります。必要性のある方は医師と相談したうえ、再び骨セメントを行います。
- 可能性としては低いですが、セメント製剤によるアレルギーショック、不整脈の発生、一過性血圧低下などがあります。
これら合併症(副作用)に対して、ここで紹介した治療では使用する骨セメントが少ない量で行われるため、合併症(副作用)の発生率、可能性ははるかに低いと考えられています。極めて稀な合併症ですがアレルギーショックや肺塞栓症などは命に関わることもあります。
当院ではGE社製16列マルチスライスCTやGE社製外科用X線装置を使い、リアルタイムで何度もシミュレーションをしセメント注入部位を決めていきます。しかし、術中に合併症(副作用)が起こってしまった場合には、できる限り軽い症状で収まるように対処を行います。
術後の日常生活で気をつけることとは?
特にありませんが、痛みが無くなったことで逆に無理をしてしまうと治療した以外の背骨(脊椎)を骨折してしまう恐れがあります。基本的には骨粗鬆症など骨がもろい方への治療ですので、それなりに気をつける必要があると考えられます。
当院でのこれまでの実績
2005年より経皮的経椎弓根的骨セメント注入術を施行しています。
男性 | 女性 | 合計 | |
---|---|---|---|
2005年 | 6 | 11 | 17 |
2006年 | 13 | 49 | 62 |
2007年 | 14 | 38 | 52 |
2008年 | 11 | 34 | 45 |
2009年 | 12 | 40 | 52 |
2010年 | 13 | 35 | 48 |
2011年 | 16 | 55 | 71 |
2012年 | 17 | 46 | 63 |
2013年 | 23 | 66 | 89 |
2014年 | 19 | 53 | 72 |
2015年 | 4 | 35 | 39 |
2016年 | 9 | 47 | 56 |
2017年 | 14 | 43 | 57 |
2018年 | 9 | 37 | 46 |
2019年 | 13 | 46 | 59 |
合計 | 193 | 635 | 828 |
※2020年7月現在